吸血鬼ダンテルの苦悩

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吸血鬼ダンテルの苦悩

 吸血鬼の始祖であるダンテルは、手下の三幹部から報告を聞きながら食事をしていた。 「養殖場の方は変わりありません。産ませた子供も順調に育っており、新たに捕まえてくる人間もいますので、老化で廃棄する人間の数と釣り合っております」  そう淡々と報告するのはダンテルの右腕、エリアスだ。絶対に笑わないまじめな男だ。 「半分以上は、順番に血を抜かれるだけで衣食住の心配がないってありがたがっています。いい食事を与えているのはいい血液を作るためなのに。フン。ばかじゃないか」  カリスが鼻で笑う。元教師で、まじめなのはエリアスも同じだが、カリスはブラックな職場にいすぎたためか、本当に人間が嫌いになっているし、人間を食料と見下している。 「その養殖の人間だけど、また気に入ったのを眷属にしてもいいですかあ?」  ユリアがそうダンテルに訊く。いい加減で飽きっぽく惚れやすく、少々ケバい。  カリスがムッとしたように眉を寄せてユリアを睨む。 「三人増やしたただろう。まだ必要なのか?」  それにユリアは悪びれることもなく言う。 「この前ハンターに見つかって始末されたわ。大体、飽きちゃってたし。それに、好みの顔の子を見つけたの。うふふっ」  ユリアが笑うのに、カリスは顔を歪め、エリアスはダンテルの方に顔を向けた。 「ダンテル様、いかがいたしますか」  ダンテルは赤い液体が注がれたグラスを傾けて言う。 「今回は仕方が無いとするが、いい加減にしておけよ」 「はあい」  ユリアは一応そう返事をしたが、返事だけなのは誰の目にも明らかだった。  それでもダンテルが、 「見ない顔のやつらが現われたと聞いたが、ハンターか?」 と訊いたので、エリアスとカリスは真面目な顔付きでユリアからダンテルに視線を移した。 「いえ、詳しいことはまだ不明です。しかし、銀の武器も所持せずにただ逃げていただけだそうですから、一般人でしょう」 「どこかに、まだ隠れ住んでいる人間のコミュニティがあったんでしょうかね。私が探し出して、根こそぎ殺して来ましょうか」 「殺してどうする、カリス。養殖場に送れ」  エリアスに言われ、カリスははっとしたように頭を下げた。 「つい、申し訳ありません」 「まあいい。各々、よろしく頼むぞ」  そう言って、ダンテルは三幹部を部屋から下がらせたあと、ゆっくりとグラスの血液を飲み干した。 「はあ。やはり健康で若い女のものに限る。  次は健康な熟女だな。芳醇な香りがする。  養殖の人間は管理が行き届いているから安心だが、もう、天然物は望み薄かな」  そう言って、溜め息をつくのだった。
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