万事解決

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万事解決

 みんなが話し終わって、まずはハガネの進路について話し合った。    本人も簡単に起業できるとは思っていないようだし、思いは真剣なようだった。それに、これまでだって、毎日家族の洗濯物にかかわり、父親のスラックスなど、洗濯機に無造作に放り込まれているものをわざわざ別に洗って干してくれていた。  ハガネの決意は本物なんだな。とみんなが感じたので、無理やり大学に行かずとも、ハガネのやりたい道に行かれるよう応援することに決まった。  だって、何よりもこの家の事を考えてくれているヒーローだったのだから。  鋼鉄と、美幸のボランティアについても、家族それぞれが賛成してくれた。    ただし、鋼鉄は、相手が武器を持っていたら、無理をしないで警察に通報すること。とにかく、服の綻び位は構わないが、自分が怪我をせずに帰ってくることが条件に付けられた。  もちろん、帰宅後の練乳は今まで通り【お父さんの】が準備される。  そして、美幸についても、美人過ぎて危ないので、今まで通りガーデニング用の帽子は必須なこと。もし、人助けをして、この前のように荷物などがあまり大変な時はハガネをスマホで呼ぶことが条件につけられた。  カップ焼きそばについては、安売りの時に箱買いして、パントリーにおいておくが、美幸以外の家族は食べても週に一回にすること。美幸は慌てて食べると体に悪いので、陰で急いで食べることなく、食卓でゆっくり食べてから、家事に移ることが条件につけられた。ワサビは好みの問題なので、好きなようにするといいとみんなが言った。  ミチルのジャムについては、これまで通り、部活の後だったらジャムは一瓶まで、ゆっくりと舐める事。わざわざ自分の部屋でなくて、食卓で心行くまで味わって舐める事が条件づけられた。  それによって、スプーンや瓶を洗うのもこそこそしなくて済む。  部活のない日はカロリーが多くなってしまうので、ジャムを食べても良いが、体の為にも一瓶はやめて量は少しにすること。  ただし、ミチルのジャムは家計に響く恐れがあるので、鋼鉄のお小遣いから毎月一度、鋼鉄とミチルで親子デートを楽しみながら好きなジャムむを買ってきて、パントリーで保存しておくことが条件につけられた。  そして、これまで通り、資源ごみを捨てるのはミチルはすることを、これはミチル自ら申し出た。 「だって、結局瓶ってすごく重いしね。」  良い子である。  さて、こうして滝本家の全ヒーロー、ヒロインたちの活躍ぶりやそれぞれの癖が明らかにされた。    結果、犯罪に関連するような癖でもなく、帰宅が遅いのも家族を壊すような事案ではなかった事で、洋服のヒーローであるハガネが一番ほっとしたことは言うまでもない。  これからも、ご褒美の甘い練乳をチュッチュするお父さん。    甘酸っぱいイチゴジャム。(もちろん、イチゴの季節には生のイチゴ)を一瓶舐めてしまう娘のミチル。    そして、辛口のワサビマヨネーズをかけたカップ焼きそばを食卓でゆっくりと食べられるようになったお母さん。    食料関係の変な癖が多い家族の中で、唯一洋服に興味を持ち、いつでも、誰の服でも直したり繕ったりすることを許されたハガネ。  練乳。イチゴジャム、もしくはいちご。ワサビマヨネーズたっぷりのカップ焼きそば。  それらを紡いでゆく糸と針。綺麗に干される洗濯物。  滝本家の行く末に幸あれとねがうばかりである。    
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