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全てを明らかに(美幸・ハガネ)
美幸が恥ずかしそうに話しだした。
「私は、パートの後にエプロンから割烹着に着替えて、街のゴミ拾いをしていたのよ。ゴミ箱があるのに、結構きちんと捨てない人が多くてね。一か所捨ててあると、みんなそこにゴミをおいて行くようになるから、街が汚くなるでしょ?それが嫌だったの。」
「後は、横断歩道を渡れないお祖母ちゃんと一緒に横断歩道を渡ったりしていたのよ。」
「顔がばれると恥ずかしいからガーデニングの帽子を深くかぶってね。」
「あと、男の人だと体を触ってくる人なんかもいたから女性限定にしていたわ。」
「じゃぁ、母さんは町のヒロインだね。」
と、またハガネが茶化すと、美幸はちょっと困ったような顔で再び話し出した。
「ヒロインだけなら格好いいんだけど、実はお母さん、あなたたちに謝らなきゃいけないことがあるの。」
「あなたたちにあまり食べてはいけないと言っていたカップ焼きそば。これをマヨネーズとたっぷりのワサビをかけて食べるのがお母さんの癖なのよ。」
「へ?」
「あら。」
子供二人は少々驚いたようだが、ちょっと二人で目配せして、母親に申しだした。
「誰が食べているのかはわからなかったけど、いつも家のパントリーに大量のカップ焼きそばがある事は俺もミチルも知っていたよ。」
「ごめんなさい。時々内緒で食べていました。」
美幸は、食べた後のゴミの始末ばかり気にしていて、買ってきたカップ焼きそばは普通にパントリーにしまっていたのだった。パントリーなど、美幸の他は誰も入らないと思っていたのだ。
「まぁ、わさびはちょっとびっくりだけど。メインで食べていたのはお母さんだったんだね。」
ハガネと美幸は顔を合わせて笑った。
「いいんじゃないの?ゴミ拾いしたり、おばあさん助けたりしたらおなかすいちゃうもんね。別に母さん、太ったり健康診断引っかかったりしていないでしょ?カップ焼きそば位堂々と食べなよ~。」
ハガネが言った。
「じゃ、いよいよ俺だね。」
ハガネの告白が始まった。
「まず、進路のことだけど、これは洗濯物を干していたからやろうと思ったわけじゃなくて、僕はもともと洋服が好きなんだ。それをお直ししたりするのもね。だから進学する先はできればクリーニング師の資格が取れる専門学校に行きたい。」
「それから、お父さんもお母さんもちょっと間が抜けすぎているよ。普段着ないものを洗濯機に入れたら、必ず干して乾かされるんだよ。」
「動きやすいTシャツとかポロシャツ。普段使わないガーデニング用帽子に割烹着。それも、この、普段着ないものはほつれやほころびが多かったんだ。」
「僕は二人が仕事の帰りに良からぬことをしているのではないか。なんて考えて今まで誰にも言えなかったんだよ。」
「ええ?そんなことを考えていたのか?」
「あら、そういえば干すときに気づかれるわよね。」
両親はそれぞれ違うことを言いながら、そろって気まずそうに顔を見合わせた。
「後、勝手にみんなの服を繕ったりして居た件だけど・・・」
「いや、それは帰って申し訳なかった。気づかないまま出していたんだな。」
「お母さんも、ごめんなさいね。ハガネにお裁縫まで押しつけていたなんて。」
「いや、だから、押しつけられていたんじゃなくて、好きでやっていた僕の趣味と言うか趣味を超えた放っておくと気持ち悪いからどうしてもやりたいと言う、癖みたいなものだったから。」
「後、ミチルの下着なんかも勝手に干していたけど、お前もお年頃なのに勝手に干していてすまなかった。気まずければミチルから言ってくると思っていたんだ。」
ミチルは『へ?』と言う顔で兄をよく見た。
「いやいや、パンツまで干してもらってごめんね。どうせちいさいときから干してもらっていたし、フリフリのとか履くようになったら流石に自分で洗うから。それまでは今まで通りに逆にお願いしたいです。」
さて、全員の告白が終わった。
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