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滝本 ハガネ
滝本ハガネは高校三年生。成績は普通で、容姿も普通。特にモテるわけでもなく、かといって友達がいないわけでもない。ただ、親友と呼べる友達まではいなかった。
それ故、授業が終わると真直ぐ家に帰る。帰宅が一番早いのは母の美幸で17時頃には帰宅しているだろうか。ハガネは高校が少し離れているので、18時頃には大抵家に着く。
滝本家は朝がなかなかに忙しい。母のパート先が花屋なので、帰りは比較的早く15時で上がるのだが、何か帰りにしているらしく、帰宅は17時頃だ。
花の仕入れ日など、朝は他のパートより早く7時半にはお店についていなければいけない日がある。
それ故、朝お洗濯をするのは忙しいので、お洗濯は前の日の夜にしてしまう。
ミチルは朝練があるし、父の鋼鉄も、職場には早く着いて準備をしなければいけないので、みんな朝が忙しい。
そこで、部活動に入っていないハガネが結局のところ、家を一番遅く出るのだ。故に、朝、ほとんど乾燥まで終わっている洗濯物を一旦外干ししてから出かけるのはハガネの役割になっている。
実はハガネには誰にも知られていない趣味があった。
洋服が好きなのだ。将来は洋服のお直しや、かけはぎなどもできるクリーニング店を開くのが夢だ。
それなので、家族全員の衣服を干すことは全く苦にならない。
妹の下着を干すことは少々抵抗はあるが、普通は抵抗があるのは妹のミチルだろうし、ミチルが文句を言わないのだからハガネが干していても構わないのだろう。そもそも、妹の下着に興味はないし、陸上部の妹はスポーツ系の下着しか持っていないので、ハガネも特に意識しないことにしている。
滝本家の衣類はすべてハガネの頭に入っている。
それがゆえに、父や母が秘密をもっている事も何となくわかっている。
父の鋼鉄の洗濯物は本来、ワイシャツと、毎日寄ってくると本人が言っている合気道の道場の道着のはずだ。
他に、スーツのズボンが洗えるスーツなので、これはハガネが朝、タイマーでドライコースで洗ってから、学校に行く。ハガネが帰宅するころ、洗い終わっているようにしておくのだ。同じズボンが3着ある。帰宅後、陰干し専用なので、そのまま夜のベランダにつるし、朝回収する。
ズボンの手間はまぁ、良いのだが、その他になぜか必ず身軽な上着が入っていることは不思議だ。ましてや、時々その上着が破れていたりする。
合気道の後に着替えてくるという事もあるだろう。しかし、合気道の道場に行っている割には道着が洗濯に出されることもない。道場の後に着るのに身軽な上着が破れたりすることもないだろう。
ハガネは将来クリーニング店を開きたいと思っているくらいなので、破れなどは気になり、自分で直してしまう。だから父は自分の上着が破れていることに気付いていないだろう。
ただ、高校生のハガネが考えるに、道場に行っていないのに、帰宅が毎日遅いとなれば家族に波紋が広がるかもしれないので、黙っている。
母の美幸の洗濯物も少々変わっている。
母親の下着は別にこれも干される本人が気にしていないので、気にせず干している。おへそまでくる普通のおばさんパンツだ。ブラジャーはミチルと同じスポーツタイプなので気にならない。
しかし、なぜか家でガーデニングをしていないのに、ガーデニングの帽子や、軍手、そして不思議なことに割烹着が混ざっていることがある。花屋なので普段はエプロンにポロシャツと言った格好だ花屋なので棘や葉っぱなどで色々ひっかけてっしまうこともあるのだろうが、ズボンや普段着ているポロシャツにほつれが多いのだ。
ハガネは将来自分でかけはぎをやろうと思っているくらいなので手先は器用で、多少のほつれなどは自分で直しておくので、きっと母は衣類がほつれていることに気付いていないだろう。
母も父と同じで、15時にパートが終わる割には時々ハガネより帰りが遅い日がある。これも高校生のハガネにとっては由々しきことで、色々考えを及ばせると家族に波紋が広がってしまいそうで、誰にも言い出せない。
ミチルに関しては特に衣類で気づくような秘密はないようだ。
ただ、朝、パンを食べようとした時に時々前日よりジャムの量が増えていることがある。ハガネとミチルの他は、朝はご飯なのでジャムを使うのは二人だけだ。食べてしまって減っているのならともかく、増えていることには少々合点がいかない。
多分ミチルが何か知っているのかもしれないが、特に迷惑をかけられているわけでもないので、追及はしていない。
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