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「お前、ドッジボールの約束すっぽかしたと思ったら!そーゆーことだったのかよー!」
翌日。僕は約束していた友達の一人、クラスメートのセンチ君に思い切り笑われたのだった。ちなみにセンチ君というのはあだ名である。下の名前が超キラキラネームで読みづらくて、そのまま感じの通り読むと“せんち”になるからという理由だった。本人が自分の、呼ばれるとみんなが振り向くようなキラキラネームを嫌がっていたから配慮したというのもある。
「結局公園に来れないわ、算数ドリルも終わらないわ、そりゃ散々だったなー!あははははは!」
「笑い事じゃないよー。お母さん超怒ってて怖かったんだから」
「ハイハイ。でさ、俺お前よりもたくさん友達いるんだけどさ」
「マウントかよ」
「じゃなくて。他のクラスのやつも男子はほとんど覚えてるんだけど。大橋正晴なんて名前のやつ、見たことも聞いたこともねーんだけど?」
「え」
僕は目を丸くした。てっきり、この学校の生徒だと思っていたのに違うのだろうか。ドッジボールも得意そうだし、結構有名人かもしれないと思っていたのに。
僕が固まっていると、センチ君はややニヤニヤと笑いながら言ったのだった。
「実は、最近変な噂があるって知ってるか?この学校には幽霊が出るんだってさ。そいつ、校舎の裏に近づこうとすると、ボールを頭の上に落としてくるんだって!で、遊ぼうぜって誘うんだって。瑛二が遊んだそいつももしかして……なぁ?」
そんなこと言われてしまったら、ビビるしかないではないか。でもってセンチ君の意地悪なところは、今日もそいつが来るかどうかを一人で確かめてこい!と僕に命令してくることである。
クラスのリーダーみたいな立場のセンチ君には誰も逆らえない。それに、僕だって男だから意地はある。あの子が本当に幽霊なのかどうか、しっかり確かめてやろうと思ったのだ。
だからその日の帰りも、僕は校舎の裏に近づいたのだった。そして。
「いったい!」
やっぱりボールが落ちてきた。むっとして振り向けば、やっぱりそこには昨日遊んだのと同じマサハルという少年の姿が。
彼はけらけら笑って僕に言ったのだ。
「よお。今日も遊ぼうぜ」
で。
僕はまたしても彼と遊んでしまい、帰りが遅くなってお母さんにめっちゃ怒られる羽目になったのだった。なんだか、彼に遊びに誘われると断れないのである。幽霊の使う魔法のようなものなのだろうか。実際、先生が現れると少年は煙のように消えてしまうのだ。
――あいつ、本当に幽霊なのかな。幽霊なら、なんであそこにいるんだろう。僕達とそんなに遊びたいのかな。
僕はなんとなく、そんなことを思っていた。ただ、この日を堺に話が急激に広まり、少年に会おうとする人が増えたのが問題である。
この学校には、男の子の幽霊が出る。
何人も何人も目撃者が出た上、実は何十年も前にこの学校で転落事故で死んだ子供がいるという話まで出てきたからそりゃ大騒ぎだ。しかも、その少年の名前が“大橋正晴”というのだから。
ここまで噂が広まってしまうと、学校も放置しておけないと踏んだのだろう。ある日、先生が言ったのだった。
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