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「みんな、校舎裏に近づかないでね。……幽霊の男の子は、今度ちゃんとしたお祓いの人に頼んで、成仏させてもらうことになりましたからね」
学校側にも事情があるのはわかっている。幽霊が出る学校、なんて不名誉な噂は一刻も早く払拭したかったのだろう。それに、その少年が悪霊ではないなんて保証はない。ほったらかしにしておいたら、そのうち悪さをするかもしれない、と。
でも僕は、なんだか寂しいなと思ったのである。あの後も何度か少年と遊んだが、時間を忘れて遊んでしまうこと以外に実害は何もなかった。あの子が悪い幽霊だとは、僕にはまったく思えなかったのである。
――あいつ、みんなと遊びたいだけなんじゃないのかな。無理やり成仏させるみたいなことしたら、なんか可哀想じゃないかな。
この時思っていたのはそれだった。
先生達が大橋正晴の霊を、神社の人にお願いしてお祓いして貰ったところ。彼の幽霊は出なくなったし、校舎裏に近づいてもボールを頭に落とされることはなくなった。これで万事解決と、誰もが思っていただろう。しかし。
「いっ、いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
彼を“除霊”してすぐのこと。子供達が放課後、突然いなくなる事件が起きたのだ。
そして彼らがいなくなって数日後、校舎裏で先生の悲鳴が上がった。――あの校舎裏の、動物のお墓の前に。引き千切られた子供の足が落ちていたがために。
足は、それぞれ別の子供のものが数日に分けて捨てられた。いなくなったのは四人。四人の子供の足が一本ずつ、校舎裏に出現するという怪事件が起きたのである。
見つかったのら彼らの足だけ。
しかも、すべての足が“力任せに引き千切られた”ような状態だったという。誰かが、子供の足を無理やり引っ張って引きちぎって捨てていったのだ。――そんなこと、人間の力でできるはずがない。
校舎裏には、何かがいる。
あるいはその近くに、何かやばいものがいる。
ひょっとしたら、無理やり成仏させた大橋少年の呪いなのでは?そんな噂も立った。
校舎裏は封印され、僕はその直後に折り悪く転校することになったのでその後のことはわからない。でも、大人になったあとでやりきれない気持ちになっているのも事実なのだ。
あのマサハル少年は、正義感がとても強い少年だったという。そんな彼が子どもたちに危害を加えようとするだろうか。
――ひょっとしたら、あいつ、校舎裏にやばいものが住み着いたって気づいてたんじゃないのか?だから遊びに誘うことで、子供達があそこに近寄らないようにしてたんじゃ。だから、あいつがいなくなった途端、子供達が次々と……。
僕の推測が正しいかどうかはわからない。でも、もしもまだあの小学生に、校舎裏の怪物が残っていたらと思うとゾッとするのだ。
もうボールを落としてくれる男の子は、あそこにはいないのだから。
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