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「藤さんって一見冷たそうなのに優しい…ですよね」
ずっと思っていたことをそのまま口にすれば今度は心底面白そうに声に出して笑いながら
「そう思ってんのはお前くらいじゃねえの」
そう言って、体温を移すように丁寧に唇を重ねてきて角度を変えて吐息を絡み取られた。
…………なんで?
こんなに触れる手も唇も体温も。
全てがこんなにも優しいのに。
「ま、その足腰じゃ立つことすらままならねぇだろうし今日は泊まっていけば。まあ昨日の男がお前の新しく出来た彼氏とかじゃなければの話だけどな」
……昨日の、男……?
それって、
「唯のことですか?」
っていうか、唯しか思い当たる人物がいないんだけど。
「名前までは知らねえよ」
「……クラブで一緒にいた人なら彼氏じゃない、です」
「へぇ。ならなんも問題ねえだろ」
「問題なら大ありです」
「俺にはねえな。世話くらいならしてやるぞ。立てねえ原因は俺が作っちまったしな」
……まさかとは思いたいけど、まさかわざと立てなくなるまで抱き潰したんじゃないか……。
藤さんに限ってそんなことは無いと思うんだけど、そう疑ってしまうほど機嫌よく笑う藤さんに、あたしはそれ以上抵抗するのを諦めたのだった。
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