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「悪ぃけど30分くらい手ぇ離せねえわ」
藤さんの家に着き、藤さんの最初の言葉がこれ。
「わかりました」
「悪ぃな。少し退屈させる」
「いえ、お仕事ですよね?あたしならスマホでも弄りながら幾らでも待てるので」
30分とは言わず1時間でも2時間でも。きっと藤さんのことだから今日も家まで送ってもらえるだろうし終電のことは気にしなくても良さそうだから何時間でも待とうと思えば待てる。
広いのに最低限の家具しか置かれていないリビングであたし一人ポツンと残され、見るからに高そうな皮の素材のソファに身を沈めてスマホを開く。
今はスマートフォンひとつあればいくらでも暇つぶしが可能だ。SNSでも見ていれば30分なんてあっという間に過ぎるだろう。
適当に画面をスクロールさせてSNSを流し見していれば突然スマホが震え出した。
…………電話?
「……もしもし?」
『あ、茉那〜?いまへーき〜?』
いつもより高めの声に語尾を伸ばした甘えるような話し方……ってことは男と一緒?
「平気だけどどうしたの?」
『ん〜、今さぁ、唯んとこのホストで飲んでて女1人も良かったんだけど誰か呼びたくなって〜電話してみた!!』
…………そういうこと。
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