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「なんなら泊まっていってもいいしな」
「それは……」
「なんだ?他の男の家には泊まるくせに俺ん家には泊まっていってくれねえのか?」
それは寂しいなぁ、と。
きっとさっきの電話は筒抜けだったのだろう。ほんの少し瞳の奥に青く、冷たい僅かな怒りを込めたような目で見られ居心地が悪い。
「っ……それ、は」
―――藤さんだから。
婚約者のいる人だとわかってるからそんな安易に泊まるなんて出来ない、と。
言うか言わないか迷っていればそんなあたしを助けるように聞きなれない音が大きな音で鳴り響いた。
…………な、に…………?
音の出処は近いように感じる。
「チッ……誰だ」
徐に舌打ちを零した藤さんはあたしの咥内から指を抜き、その手を自身のズボンのポケットに忍び込ませ中から黒のカバーが着けられたスマホを取りだした。
そのスマホから鳴る機械音。
どうやら音の出処は藤さんのスマホだったらしい。
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