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「――なんだ」
仕事の電話かな?
その隙に身体を起こし身なりを整えようとしたあたしに聞こえた
―――『藤さん?今お時間大丈夫ですか?』
聞き覚えのない少し控えめな女の人の声。
だけどそれよりも。
「嗚呼……ランか。どうした?」
――いつもとは違う、どこか相手を気遣うような柔らかい藤さんの声色に身体が固まった。
…………そんな優しい声、初めて聞いた。
それに何処と無く相手がわかった途端藤さんの纏う空気も柔らかくなったような気がする。
だからすぐにわかった。
―――電話の相手は少なからず藤さんの特別な相手だということが。
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