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「今年は、桜の開花はあと数日かな……
私立高校は自分の転任はないけど、その分毎回教え子たちに置いてかれる気がすんだよな。
卒業式の日の青空を背景にすると、こうやって空へ上る煙草の煙も切なく見えるもんだな……」
「あー、深澤せんせーまた教官室の窓辺でぼーっと喫煙してる〜。いけないーんだ」
「三十路の男の広い背中とタバコ、いつ見てもいいよねえ」
「うるせー。教官室はノックして入れー」
「先生、一緒に写真撮ろ! 式終わったらすぐいなくなっちゃうからここまで探しにきてあげたんじゃん!」
「化学の授業めちゃくちゃきつかったけど、先生のおかげで合格できたんすよオレ。ありがとうございました!」
「先生なんだかんだでファン多いよねー」
「あーわかったわかった。撮ったらお前らさっさと家帰れよ。打ち上げではしゃぎすぎんなよ、大学合格取り消されんぞー」
「あはは、そんなヘマしませんて。センセこそあんまタバコ吸い過ぎちゃダメですよ〜」
「先生、化学専門なんだから、タバコでハゲるのくらい知ってますよね? イケオジが台無しっすよ」
「るせー。オジは余計だ、オジは。ほれ撮るぞ」
「じゃ撮りますねー。……はい、布団がふっとんだ!」
「ぶっ、寒いダジャレやめろ!」
「はいー撮れた! 全員笑っててバッチリっす!」
「じゃあ、先生。お世話になりました!」
「……ったく、最後まで賑やかなヤツら。
さてと。
こうやって待ってても、会えなそうだし。
——あー、カッコわる。
俺もさっさと帰って来年度に向けた準備でも……
ん……引き出しに……封筒?
何だこれ……」
『先生。
今まで、ありがとうございました。
あなたが応援してくれた夢、必ず叶えます。
目指す医師になって、また必ずここに来ます。
だいぶ先になりますが——その時まで、待っていてくれませんか』
「…………は……?
おい、どんだけ待たせんだ……その頃はもうジジイだぞ……?
——もちろん、待てっていうなら死ぬまで待つけどな」
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