夏休み

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 異常に暑い夏は、昼間はエアコンをつけてじっとして、夕方になると散歩に出る。沖縄みたい。そのうち日本全土が亜熱帯、と言うと、景子は冬は冬で異常に寒いけどね、と言った。ガーゼの夏掛けが規則正しく上下する。りおの寝顔を見て、この子は生まれたときから異常気象か、と、雛子は思った。  雛子が中学二年生の時に、景子は二十三歳でりおを産んだ。もうお前はおばさんだ、と景子に言われた途端、急に自分が同級生より老けてしまったような気がした。そしてそれ以来なんとなく落ち着いたふるまいをするようになってしまった。確かに自分はりおの叔母さんだけれどでもまだ十四歳なのに、と思いながら、しかし赤ん坊を見ると、この子より子供っぽいことはできないな、とも思えた。 「直之さんは大変だねえ、この暑いのに」 「まあ、いつものことよ」 「お姉ちゃんは総務でよかったね。休みとれて」 「うんまあ、そういう部署じゃないと子供いるとね」 「あたしもそういうところ狙おっかな」 「配置は人事の権限でね」  鼻から息を出すと、雛子は畳に寝そべった。天井の木目を眺めながら、頭の中には同級生たちの姿が浮かんでくる。みんななにやってるかなー、と独り言を言う。 「いいねえ、大学。私も行きゃ良かったな」 「別に中年になってからくる人もいるし」  そっか、りおが大きくなったらどこかに社会人入学しようかな、と景子が言った。
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