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「何勉強したいの?」
「ほら、商法とかさ、経営学とかさ」
「スキルアップ? レベルアップ?」
「まーねー」
景子も隣に寝そべった。新卒の子と同じ仕事してんだもん私、と、昨日の夕飯の後で母親の華子に言っていたのを思い出した。
「あんたは何したいの?」
景子は天井を見つめながら聞いた。
「別にー。何したらいいかわかんないよ」
それは、何でも出来そうな気がしていることの、別の答え方だった。
りおの寝息が聞こえる。
「もう就活はじめてる人いるんだよね」
「一年生で?」
「就職に有利な資格を取ろうとか。企業研究とか」
「すげー」
「でしょ。焦るよ」
そこまでしないといけないのだろうか? しばらく天井を見つめたあと、
「どういう人が採用されるの?」
首だけ景子に向けて、訊いてみる。
「うーん、あたしみたいに容姿端麗頭脳明晰品行方正じゃないと無理なんじゃない?」
首を元に戻す。茶色の木目が視界いっぱいに広がる。どこでもいいとは思っていない。義兄の直之のように休みがあまりとれないのはつらそうだ。しかしそうも言ってられなくなるのだろう。大学の四年間は、就活でいっぱいいっぱいになりそうな予感がする。
「悩んでも仕方ないよ。心配ならそれこそ友達のように前向きに頑張らないと」
「頑張れって言っちゃイヤ」
「頑張れ頑張れ」
続けて言われると、なんか元気が出てくるような気がする不思議。
「晩御飯何かな」
景子は暑くて食欲がなく、うどんを残した。食べないの? と聞くりおに、りおはこれから大きくなるからちゃんと食べるんだよ、お母さんはもうじゅうぶん大きいから残してもいいんだよ、と言い聞かせていた。
「たぶん、中華じゃない? お父さんが海鮮焼きそば食べたいって言ってたから」
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