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夕方になり陽が落ちると幾分外に出やすくなる。昼寝をしたりおはご機嫌で、影踏みをしながらみんなの後についてくる。踏んだー、と言っては父の猛の頭部の影をぐりぐりと執拗に踏みつける。
「いたたたー痛いよ、りおちゃん」
猛は頭を両手で抱えて苦しそうに身をよじってみせる。今度は華子の頭の影を狙うが、華子はひょいと身をかわした。
猛が先に仕事から帰り、遅番のパートから帰ってきた華子を待って、家族五人で外出した。
「うちって、外食が多いよね」
一人暮らしを始めた雛子は、家計が気になるようになってきた。
「昔からそうじゃん」
ワンピースのすそを揺らして景子が言う。
「お姉ちゃんもあんまり作らないの?」
「簡単なのはやるよ」
直之は帰りが遅く、休日出勤も多いのであまり家でご飯を食べない。夫婦そろって食事を取ることはほとんどない。りおに食べさせるものだけできるだけ手作りしているということだ。
景子の緩くウエーブがかかった、頭を柔らかく包み込むような短めのボブから、細長い首がすっと伸びている。雛子より身長が五センチ高いが、体重は同じだ。高校までバスケのフォワードで、三年生のときには県大会でベスト四まで行った。女の子にもファンが多かった。相変わらずお姉ちゃんはかっこいいな、と雛子は後姿を見て思った。
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