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あるところに、大海から妖精が移り住んだと噂される、緑濃い森に囲まれた国がありました。城下に立つ時計台を中心に、東と西に塔を持ち、雪を冠した北山からは、清らな川が流れます。
妖精は木々を繁らせ、その息吹で種子から双葉を目覚めさせ、秋には溢れんばかりの収穫をもたらします。恵みは人を笑顔にし、互いに手を取り合って、新たな絆が生まれます。
そうして毎年この国は、実りと出会いを繰り返し、永らく栄えてきたのです。
いつしか始まる感謝の祭。
舞子の拍子と歌声は、山車とともに街を抜け、
朝日の昇る東の塔から、時計台のある市場を抜けて、夕日の沈む西の塔へ。
今年の恵みと新たな出会いに皆で感謝を送るのです。
季節は秋。紅葉の秋。実りの秋。祭りの秋。
昔話にちなみまして、町娘の扮する「妖精」が、新たな出会いを祈ります。
朱く色づく紅葉を渡し、尊い絆を結ぶのです。
そんな小さなまじないすらも、信じたくなる祭りの日。
さあ祭の始まりです。
豊穣祭の始まりです。
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