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「そうか、じゃあ、これを」
大事に仕舞っていた箱を彼女に差し出した。彼女はそれを右手で受け取る。彼女の手足の麻痺も大きく改善しているんだ。
「これは……」
杏奈はその箱を見つめて肩を震わせている。勿論、彼女はそれが何か知っていた。ニ年前、彼女が僕に突き返した……。
「これ…… 指輪……」
「杏奈。僕は君のALSを治療すると言うあの日の約束を叶えた。だから約束通り僕と結婚して欲しい。そしてこれからは、お義父さんの様な非遺伝性のALSを治療する新薬の開発に取り組む。これが僕の新しい約束だ。君と一緒ならこの約束を叶えられると思うんだ。どうかな?」
杏奈が大きく頷いている。その顔は涙でグチャグチャだった。
「はい、翔。貴方と一緒にALSのみんなを助ける約束を叶えたい」
僕は大きく頷くと杏奈を抱き締めた。彼女も僕の背中に腕を回してくれる。それはALSの患者には絶対出来ない動きだった。その力はまだ弱かったけど、彼女がALSから回復した事を改めて確認する事が出来る。
「杏奈、ありがとう。愛しているよ!」
FIN
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