舞い込んだ手紙

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「大森先生。まさか来て頂けるとは思いませんでした。どうしても娘が不憫で手紙を出しました。娘には絶対に連絡しないでと言われていたのですが……」  僕は何も言えなくて頷くだけだった。 「多分、自分の声で話せる最後の機会だと思います。逢ってやって下さい。こちらです」  そう言うと彼女は僕を病室に案内してくれた。  病室に入ると主治医の診察が行われていた。振り返った医師に僕は頭を下げた。  ベッドの上で僕を見た杏奈は大きく目を見開いた。まだ顔の筋肉はしていない様だ。  お母さんが僕を主治医に紹介すると、彼は僕に頭を下げた。 「大森先生、初めまして。脳神経内科の高木です。先生の論文を読ませて頂いています。後でオフィスへ来て頂ければ杏奈さんの状況を説明します。それでは」  高木先生はそう言うと僕に軽く会釈をして病室を出て行った。 「それじゃ杏奈。母さんも散歩して来るから二人で話して。大森先生、宜しくお願いします」  お母さんは大きく頭を下げると病室を出て行った。
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