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序章 事故
「話をしよう。あぁ別に身構える必要は無い、これはどこにでも存在し、どこにでもある、そんなちっぽけなくだらない話さ。」
あれは、とある交差点で起きた事故だった。
とても騒々しかった、それもそうか人が死んでしまうくらいの事故だったんだ。
僕は遠くで見てるだけだった、だけど同時にこうも思った。
「たった一人死んだとこで、別に俺達に何か困る事なんかないだろ
何をいちいち騒いでるんだ?」
序章
「あれは君のせいじゃない、気にするな。」
知らない誰かが隣で囁く。
私の目の前には微かに蠢くまだ生温かい血紅色に包まれた肉塊が無残に転が
り血紅色の液体を四方に飛散させていた。
「君が止めようと止めまいとあれは結局助からなかった。」
隣にいる知らない誰かが妙に落ち着いた様子で私にそう言ってきた。
「何を言って…」
私は、驚いた表情でそう言いかけたが。
隣にいた誰かは話を遮り。
「本当に気にしなくていい飛び出したのは、あの少年なんだ、君が気にする程の事じゃない。君はこんなこと忘れていつもどうり過に過ごせばいい。」
横にいる知らない誰かは、妙に落ち着いた様子で、感情の起伏をほとんど見せずに落ち着いた声色でそう言った。
いや、そう言ってくれたという方が正しいか。
「そうですよね…」
これは本心からの言葉か、すぐ隣で囁かれた私は、不気味に、奇妙に、そして気味悪く、不安げに、明らかに取り繕ったであろう安堵の表情を浮かべこう言った。
「こんな車の多い時間帯に私の目の前で飛び出すあの子が悪いんだ!、私は何も悪くない。私は何も悪くない。私は何も悪くないんだ!」
そう自分に言い聞かせている私は妙に自信が無さげで、追い詰められた末に自分自身を正当化しているように見えた。
果たして私は本当に何も悪くなかったのか?
本来であれば私は少年を助けることができたかもしれない、私は少年より先に信号を待っていた。
少年が走って来る少し前から待っていたのだ。
そのため一言注意すれば助けられたかもしれないのだ。
注意をするという行為そのものを面倒に感じてしまい言わなかった、いや言えなかった。 自身の怠惰で少年が目の前で肉塊となったのだ。
そのことを私自身、気づいていたが罪悪感に押しつぶされそうになり一時的な現実逃避のために正当化していたのか、あるいは、もっと他の理由があったのかもしれないが、今でも良くわからない。
だがあの時、「君は悪くない。」と言われ
心のどこかで安堵していたのは事実だ。
だが私はあまり気にしない様にしている。 やはり飛び出した少年が悪いのだ。
他人から見れば、関係の人がいくらいなくなろうと知ったことではないのだ。
だが、私は自分を正当化しておきながら、未だにあの少年が轢かれてしまった時の記憶を、不意に鮮明に思い出す時があるのだ。
そのたびに深く考えてしまう。
私は悪くないのだ、どうして思い出す?
どうして。
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