233話 よくある 物語の始まり

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233話 よくある 物語の始まり

 騎士学園の闘技場で行われた検証は沢山の生徒や外からの貴族様たちで雑踏としていて、喧騒とした中、開催された。  騎士服を纏ったアルギニオさんの戦斧を前に、目隠しをして彼に背を向けて攻撃を躱したとき、これが王国一の『剛腕の騎士』の剣術? なんて内心で首を傾げてしまうものだった。  品のある顎髭を蓄えたアルギニオさんの覇気は歳を召しているにも拘わらず、確かに凄まじく、背後から突き刺さるようなものがあった。戦斧が空を切る音からも、その威力は相当なものだとわかる。たとえ刃がついていない鍛錬用のものであっても、当たればタダじゃ済まないと思う。でも、噂に聞いていたその攻撃で、岩をも砕ける? とてもそんなふうに思えなかった。  一振り、二振りと躱して、四振り目でアルギニオさんの攻撃が止まり、感じていた覇気が薄れていく。  あれ? 終わり? 目隠しをしていた僕には、どうしたのか状況が飲み込めず、戸惑ってしまった。  構えていた姿勢を解き、耳を澄まして話し始めた彼の言葉を聴き取る。話し相手はどうやらルシード王様のようだ。 「残っている最後の一撃、ギル様の目隠しを取ってもらい、わたくしの会心の一撃を受けてもらうというものはいかがでしょうか? ギル様はどう凌ぐのか? それを判断材料にしてもらうというのは、いかがでしょうか」  二人がなんの話し合いをしているのか理解できなかったけれど、『会心の一撃』という言葉を耳にして、やっぱり今までの攻撃は本当の力じゃなかったんだとわかった。
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