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『僕が凌ぐ』? つまり最後の一撃がアルギニオさんの本来の剣術なんだ。そう理解ときだった。予想していなかったところから突然声がしたのだ。
「本来の検証から話が逸れていると思われます。今回はギル様が攻撃を感じられるか、その検証だったはずです」
ユーディー様だ! ――そう目隠ししたまま振り返る。
どうやらユーディー様は、僕が攻撃を喰らったときのことを思い、中止を申し出てくれているようだ。
しかしこの検証が行われるきっかけは、僕とリリーが八百長をしていると言われていることを聞いて、ユーディー様が庇ってしまったことで始まったものだ。ここまでまた僕を擁護するような発言をしてしまうと、更に西側の貴族様たちから反感を受けるのでは?
最近ユーディー様には迷惑ばかりかけている。
ナクモの森では気弱になってしまった僕を慰めてくれたり、婚約者がいるにも拘らず抱きしめてしまったり。優しい彼女は気にしないでくださいと言ってくれたけれど、最近の自分の不甲斐なさに恥ずかしくなってきた。
僕と知り合ったばかりに、これ以上迷惑はかけてはいけない。
そう意を決し、目隠しを取るとアルギニオさんの申し出を受けることにした。
「やらせて頂きます」と。
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