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273話 合同鍛錬
一通り魔術陣の講習が終わり、中庭で僕たちが騒いでいる中、『白いの』のお姉様が腑に落ちないという表情を浮かべている。
やはり気になるのはユーディー様が壁を壊すときに放った、オレンジ色の土の球が気になっているらしい。そのような魔術を放った魔術使いは聞き覚えがないというのだ。過去に同じような者がいたとすれば噂になっているだろうと。
「ユーディー様とギルの魔力では、どちらが高いのですか?」
魔獣討伐のときのことを思い出せば、当然、魔獣の魔術を跳ね返したユーディー様の魔力のほうが高いに決まっている。でも、マーレ様がいるこの場ではそのことは隠しておかなければ。聞こえなかった身振りを決め込んだ。
「つ、次は側仕えたちとの鍛錬ですね」
と、話題をうやむやにする。
すると僕の言葉に彼女たちの覇気が反応したのだった。
「ギル。妹たちを煽るではない」
日が沈みかけている空を一瞥した『桃色の』のお姉様がやる気満々の彼女たちを制する。
夕刻の支度にかかれ! ――と言われ、肩透かしを食らった側仕えたちは不服そうな態度を見せつつも、聖女様としぶしぶ屋敷へと向かって歩みだした。
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