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まったく。と『桃色の』のお姉様に睨まれ、おずおずと視線を躱していると、マーレ様に不思議そうな顔つきで訊ねられた。
「彼女たちとどのような鍛錬をするのですか?」
ここへくる馬車の中でも話したように、側仕えたちは聖女様の護衛も兼ねているので、腕に仕込んでいる短剣を使う。その鍛錬の一環で彼女たちは体術が使えるのだと説明した。
「実は、僕は彼女たちに一度も勝てたことがないんですけれど」
と、その恥ずかしい事実を笑って胡麻化すと、二人は「へ?」と素っ頓狂な声を上げてびっくりしたのだった。
五十連敗! 僕の戦歴を聞いて目をぱちぱちと瞬かせている二人は信じられないと呟く。
「本当なのですか?」
「ええ、まあ」
真実を受け入られないとマーレ様が更に聞き直してきた。
「つまり彼女たちは、リリー姫様やアルギニオ様より強いということですか?」
「それはどうでしょう」
そう。彼女たちの強さは僕たちと少し違うのだ。
相手を殺すための強さ――それをどう説明したらいいものかと言葉に困る。明日になればわかることなんだけど、口にはしたくない。
「明日になればわかると思います」
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