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これで本日、三人の側仕えたちに負けてしまった。
相変わらずもの凄い殺気と執念だ。
普段の模擬戦よりも精神力を削られてしまい、腰を折って膝に手を突き肩で呼吸を整える。
何度も放っていた攻撃を、ただ一瞬躊躇ってしまった僕に対して、なにも迷うことなく僕の喉仏を狙ってきた。左腕の痛みは感じていないのだろうかと疑ってしまう。
負けが続いた僕に観戦していたユーディー様とマーレ様が青ざめた顔をして近づいてきた。
「どういうことですか? この手合わせは?」
側仕えたちの正気の沙汰とは思えない行動に、ユーディー様たちは驚きと焦りを隠せていない。付き人だったときの彼女たちからは、今のような状況になるとは想像していなかったんだと思う。
「ここでの勝敗は気を許したほうが負けなんです」
背筋を起こして大きく深呼吸しながらあえて言葉を濁して言う。
「続きはいけるかギル?」
気遣ってくれる『桃色の』のお姉様に頷き、ユーディー様たちへ離れるように促した。
四人目。被り物のヴェールで顔は見えないけれど、覇気から察するに最後の相手は代弁者でもあるグレーの髪の側仕えだ。彼女たちの中で冷静で一番厄介な相手だ。
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