233話 よくある 物語の始まり

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 僕の返答を受けてルシード王様が検証の再会を宣言する。するとユーディー様は崩れるように椅子に腰を落とし、顔を手で覆ってしまわれた。そんな彼女に、もうこれ以上心配させられない。  ポケットに手を突っ込み、預かっているハイポーションの小瓶を握り締め、気持ちを落ち着かせる。  すると僕を見るアルギニオさんの目つきも、顔つきも、雰囲気も変わった感じがする。その瞬間、ただならぬ殺気を感じ、身に危険を感じた。  この感覚には、身に覚えがある!  五十戦五十敗と負かされた聖女様の側仕えである五人の彼女たちの顔が、ふと脳裏に浮かんだのだ。そう。相手を殺すことしか考えていない彼女たちの殺気と似ているのだ。  構えや覇気は全く違うものの、放たれる殺気がまさにそれだ。  アルギニオさんは本気だ!  さっきまでは検証だと思って、身を躱すことだけを考えていた。でも、今回は相手に勝つつもりで……いや、相手を倒すつもりで臨まないといけない。  やっぱりこの人は強い! 『剛腕の騎士』その二つ名は伊達じゃない。  相手を仕留めるつもりで立ち向かわないとやられてしまう!   大きく深呼吸して、ゆっくりと瞼を瞑る。  迷うな! 必ず受け止める! 見極めろ! そう何度も心中で繰り返し集中力を上げる。  これを制すれば彼女たちへの勝負にも、なんらかの勝機が見えるはずだ。
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