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あれから三年、いろいろあったようななかったようなで、僕は伶来さんと暮らしている。
「スーちゃん、おはよう。今日お休みだったよね。私、午前中、お父さんのところに行ってくるから」
伶来さんは僕のことを母や姉と同じスーちゃんと呼ぶ。何をどうしたらあんなスラッとした美人を奥さんにできたのかと友人から訊かれることがあるが、僕は特に何かをどうにかした覚えがないので返事の仕様がない。ただ伶来さんからはある時点から僕と一緒に生きると決めていたのだと聞かされたことはある。
「うん。伶来さん、運転には十分気をつけてね」
「もう、またぁ。さん付けはやめてと言ってるのに」
「ごめん。なかなかピッタリの呼び方が見つからなくて」
「呼び捨てで何か問題あるの?」
「いやー、それは赤江先生に怒られそうだし……」
「お父さんのことがそんなに怖いの? スーちゃん。次、さん付けで呼んだら許さないから! ……なんてね」
伶来さんはそう言って出かけていった。彼女の「許さない」ににやにやが止まらない僕だった……。
〈了〉
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