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同音異字 ~編集者の休日
作家、赤江蕾の担当が僕、山形卓に代わってまだそんなに経たない頃のことだった。
「山形くん、何年もつきあっている女に結婚を申し込んだら、他に好きな人がいるからその人と結婚すると告げられた。俗にいう二股をかけられていた男が読む、女からの置き手紙」
「急になんの話でしょう? 赤江先生。僕への何か、テストのようなものでしょうか?」
「いいから、聞きなさい。一つめ、『仕方がなかったの。二人とも好きだったから。あなたは悪くない。許せないことをしたのは私。それでもあなたには許して欲しい』。二つめが『仕方がなかったの。二人とも好きだったから。許せないことをしたのは私。あなたは私を決して許さないで』。さて、山形くんならどっちが好みかな」
「はい? ……僕の意見ですか? まず、二股かけられていたことにショックで、置き手紙なんかどうでもいい。というか何も入ってこないと思います。それこそガーン! です」
「仕方ないなあ。じゃあ、女の置き手紙を作ってみるから」
「山形さん、私がこのメモに書くので、少し待ってくださいね」
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