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「あの…」
その澄んだ声がカイトを取り巻いていた、
悪い空気を取り除いた。
声の方へ振り返る、
カイトは息の仕方を忘れた。
「ここいい?」
「あ、はい。どっど…どうぞ。」
格好悪い。どもってしまった。
そこにはさっき見た彼女がトレイを持って立っていたのだ。
耳元の濃いグリーンのイヤリングが彼女の瞳の色と合っている…
そんなことを思った。
彼女がカイトの対面に座った。
「これ、
アシュランティアの名物なのよね?」
彼女が自分で運んできたお皿の上を指差した。
なんでタメ口なんだろう…
でも、あんまり嫌じゃない。
「あ、はい。ダンプスですか?
色んな味がありますよ。あなたが食べているのもそうですが、俺のもそうなんですよ。」
カイルはにこっと笑った。
「え?見た目がこんなに違うのに!?」
そんなに素直に驚いてもらえると、
普通に嬉しい。
彼女はがぶっと大きな口でダンプスを口に入れた。
頬張った口をリスのようにもぐもぐと動かす。
その風貌とは一致しない行動にカイトは呆気にとられてしまった。
カイトは器用にフォークを使ってランチを食べていたからだ。
そのカイトの視線に彼女が気がついた。
パッと目が合ってしまう。
「す、すいません。
あまりにも豪快な食べっぷりだったので…」
彼女は頬をいっぱいにしながら微笑んだ。
あ、口の端にソースついてる。
彼女は気にしていないようだった。
「あの、ソース…ついてます。」
「あ、あひはほう。」
もぐもぐ
…きっと、
ありがとうって言ったんだろうな。
彼女が口を拭ったが、
反対だったのでとれてなかった…
いつか…気づくといいな。また無理なら教えてあげよう。
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