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人のことを詮索するなど、付き合いが続くうちは出来なかった。だけど、もう縁が切れてしまうのならば、興味本位で聞いて相手によく思われなかったとしても、たいして気にならない。そんな気持ちだった。
私の質問に、葵はあからさまに眉を顰めた。そんな彼女の態度に、「あぁ、やっぱりこういう詮索は嫌がられるよね」と思ったが、聞いてしまったものは仕方がない。「嫌な気分にさせてしまったことを謝って、彼女のそばを離れよう」、そう思った矢先、葵は口を開いた。
「これ、内緒だから誰にも言わないでね」
「うん?」
「私の彼に聞いたんだけど、凛華ちゃん、前のグループの子たちをディスったらしいよ」
「ディスった?」
そう話す葵の顔は、嬉々として見えた。先ほど見せた表情は、私に対してのものではなく、話題になっている凛華に対する葵の気持ちの表れだったのだろうかと思ってしまうほどに、葵は楽しげに話し続ける。
「うん。なんか、可愛くない奴らの集まりとか、無理して可愛くしても無駄とか」
「うわっ! まさか陰口を聞かれちゃったとか?」
「違う違う。面と向かってだって」
「面と向かって? それって本人に言ったってこと?」
「そうそう」
「うっそ! よくそんなこと出来るね」
葵の話に食いついた私の反応をみて、彼女はさらに楽しそうに話を続けた。
「私の彼と、凛華ちゃんの彼氏って知り合いじゃん」
「うん」
「だから、向こうの元カノも知ってるらしくって」
「うん?」
突然話が逸れたことに首を傾げながら相槌を打つと、葵はコソッと耳打ちをしてきた。
「なんとそれが、凛華ちゃんが前にいたグループの子らしいの」
「ええっ? 奪ったってこと?」
勢いよく耳を離し目を丸くした私の反応が面白いのか、葵はいつもはあまり見せないニヤニヤとした笑いを顔に貼り付けて頷いた。
「凛華ちゃん本人は、彼の方からきたって言ってるけどね。私の彼が言うには、凛華ちゃんから誘ってたように見えてたって」
「友達の彼氏だったんだよね?」
「そう。で、凛華ちゃんと浮気した事がバレた時に、元カノをディスったんだって。彼氏の前で」
「うわ。何それ」
「しかも、元カノを庇った他の子たちのことも、いろいろ言ったみたいだよ」
「うわ〜。それはもう、あのグループに居られなくなったことに納得だわ」
話の内容にドン引きしている私を見て、葵は満足そうな笑みを見せる。それから、ダメ押しというように声を顰めて言った。
「絶対誰にも言わないでね」と。
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