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「ずっと仲良しだよっ!!」
「私達、一生友達だよね!」
いつか聞いたそんな言葉が頭をよぎり、私はフッと鼻で笑った。女の友情は、脆くて薄っぺらい。私はもう、そんな不確かで頼りないものに振り回されるのは御免だった。
女子は群れるのが好きな生き物だ。その場だけや、期間限定の付き合いなんてこともよくある。まぁ正直、人見知りの私にはそんな芸当はかなりハードルが高いのだが。
それでも、学生の頃はなんとかそこを乗り越え、“友達”を獲得していた。と言っても、そのほとんどは向こう、つまり“友達”から声をかけてもらったのだが。
私はこの機会を逃すまいと、必死で頬を引き攣らせ、愛想笑いを貼り付けて、彼女たちの話に相槌を打った。ぼっちにだけはなるまい。その一心で。
そうして獲得した“友達”とは、環境が変わればすぐに縁が切れた。例えば、小学校の時は、転校前の学校の“友達”。中学の時は、部活で全国大会を一緒に目指した“友達”。進学先の高校では、たまたま席が隣になった“友達”。大学では、誰にでも分け隔てなく声をかける“友達”。
そんな“友達”が入れ替わり立ち替わり、私の横にいた。彼女たちは、いつも「ずっと友達」、「ずっと仲良し」を定型文の様に口にしていた。
その言葉を聞くたびに、私は口元を緩め、「うん」と頷いて見せた。だって、それが“友達”に対する正しい返しなのだから。
内心、彼女たちに違和感を覚えても、それを口に出して言ってはいけない。不満を顔に出さないように。そのことに気をつけつつ日々を過ごしていたのに、気がつけば“友達”は私のそばからいなくなっていた。
私の“友達”は増えることがなかった。いつも3、4人のグループ。前の“友達”と縁が切れた頃には、私は新しいグループに所属していた。
そうして社会人になった今、私は“友達”との縁を切ろうとしていた。
ぼっちを恐れていた私に決断させたのは、凛華が言ったという言葉だった。
私には、親しくしている同僚がいる。その人と仕事後に食事をしていたら、偶然近くにいたという優里が、その食事の席に同席したことがあった。物怖じしない優里はすぐに私の同僚と打ち解け、記念にとスマホで写真を撮っていた。
後日、どうやらその写真を目にした凛華が優里に問い詰めた。凛華は、自分に知らないことがあるのは我慢ならないタチなのだ。
問われた優里は、特に何も考える事なく言ったのだと思う。
「あの子の“友達”だよ」と。
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