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「伊勢佐木中央署の横田さんだが?」
だか?と問われて横田は頷いた。
「はい、伊勢佐木中央署の横田と申します。参考人宅までご案内するよう指示を受けています」
「若え刑事さんだね、お幾づだが?」
「今年27になりました。若輩です。宜しくお願いします」
「んだが、倅ど同ず齢だ。横浜は右も左も分がらねがらお願いするっすよ」
鈴木鑑識課長が横田と握手した。齢の割に柔らかい感触だった。
「凄く柔らかい手ですね。びっくりしました」
「んだが、お恥ずがすい。おらは鑑識課の人間だ。肌触りで分がるごどもあっから手は大事にすてる」
横田は物腰の柔らかい鈴木に安心した。
「おい横田、おらは米沢東西署の高橋だ。これがら参考人宅さ行ぐ。案内頼むぞ」
安心したのは束の間だった。刑事の中の刑事だった。
「はい、タクシーで行きましょう」
鶴見駅前ロータリーで出る。終電帰りのタクシー帰りが列を作っている。高橋が後方に並ぶタクシーに声を掛けた。そして手招きしている。米沢の二人は後部座席に座った。
「仲通りのNGマンションはご存知ですか?」
運転手は頷いて走り出した。マンションの前で停車してドアを開けた。
「運ぢゃん、ビルの後ろに回ってけろ」
一旦ドアを閉めて走り出した。玄関前ではばったり出遭うこともある。逃げられては土地勘の有る者には敵わない。高橋は車から降りてマンションの出入口を探った。出入口は玄関一カ所だけである。逃げれば必ずここを通る。あとは階段を飛び降りるしかない。
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