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「どうします、基地に行きますか?」
「嘉手納基地の事務屋だ、トーマス・ジェンキンズ中尉」
「事務屋じゃこの時間は当直でない限りいませんよ。明日の朝一番で行きますか」
「ああお願いする。宿は?」
「俺んちに泊って下さい。おふくろと二人暮らしですから、大したもんは出来ないけど手料理用意させますよ」
那覇郊外の小さな家だった。中西は安ホテルにすればよかったと悔んだ。渡嘉敷のおふくろに気を遣わせたくなかったからである。。夜中に怪しい男を連れ込んで何か危ない事件だろうと要らぬ心配をかけてしまう。
「どうぞ、シャワーでも浴びてください。おふくろ、おふくろ、くぬっちょー横浜からちゃる刑事っし中西さん、ちゅーゆるとぅまいくとぅ、さきぬしこーてぃ」
渡嘉敷も家に戻ると沖縄語になる。中西はおふくろに一礼した。
「お世話になります。手土産もなく図々しいんですが厄介になります」
「ちゃー敏夫が世話なとーいびーん。とーどーでぃん、ぬーがしこーやびーんくとぅ、好き嫌えーあいびらに?うちなー料理ーふぃーじーやいびーが?」
中西は意地悪で『はあ?』と言いたくなった。
「好き嫌いは?こっちの料理は食えるか聞いています」
「何でも食えるし量も半端じゃない、酒も同様」
中西はジェスチャー交じりで言った。
「おふくろには通じていますよ。ただ標準語が喋れないだけ。おふくろ、好き嫌いなし、がちまやーっし大さきぬみやれー」
そして宴が始まった。おふくろが三線を弾き出した。渡嘉敷が踊り出すと中西も真似て踊り出す。泡盛の40度を二升空けてダウンした。
煙草を切らし廊下に出る。まさかもういないだろうと開けたとたんに声を掛けられた。
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