都橋探偵事情『舎利』

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「おめは名城豊さんだね?」  高橋が横田と交代しながら三回目の張り込み途中だった。高橋は名城にピタと張り付いた。動いたら否応もなく取り押さえる覚悟である。手榴弾を握られている可能性があるからである。 「そうですけなんでしょうか?」  名城は心臓が高鳴る。 「おめ、山形の米沢レンタカーで軽トラック借りだ。10月の11日ど12月24日の二回、おめの免許証の写すが記録で残ってる」  小川に貸した。 「山形に?私は知りません。東北には仙台にしか行ったことがありません。三日前に紛失届を鶴見警察に提出しています」 「それはおがすい、二が月前さ利用すて三日前さ紛失届出すた。なすてほだえ間があるの?」 「ほとんど使っていません。車はないし車に乗る機会がないんです。だから無くしたのに気付いていませんでした。正月にどこかに行こうと探していたらないんです。それで届を出しました」  この言い訳はずっと考えていたもので時折声に出して練習をしていた。練習の甲斐がありスムーズに言い切れた。 「10月11日と12月14日、おめは何処にいますたが?想い出すてけろ」  二か月前は即答出来ないだろう、しかし五日前ならとぼけることは出来ない。 「時間は?」 「深夜がら明げ方」 「近くの居酒屋で飲んでいました。ほぼ毎日通っています。五日前も深夜まで飲んでいました」  居酒屋の名前を聞いても土地勘がない。名城が歩き出そうとした。 「動ぐんでね」  高橋は声を荒げた。名城は驚いて固まった。
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