67人が本棚に入れています
本棚に追加
「おめはただの参考人んね。殺人事件絡んでる。それも大勢巻ぎ込む恐れがある。勝手さ動ぐど拘束するごどになる」
「何の参考人ですか?その居酒屋に聞いていただければ分かります。私は山形には行っていません」
高橋の大声に横田が階段を駆け上がった。名城の後ろ側にピタリとくっ付いた。
「横田、この人がら居酒屋の名前ど場所聞いでけろ」
横田がメモを出した。
「仲通り商店街の居酒屋『海人』です」
横田が頷いた。
「鈴木上げでぐれ、出番だど。横田はすぐにその店さ確認」
隣の男が顔を出した。
「警察だ、表さ出ねように」
ドアがバタンと閉まった。
「俺が一体何をしたと言うんですか?正式な捜査なんですかこれ?」
「人の命護るだめだ、正式も不正もね、それども令状下げで来て大々的にやんべが?」
それは困る。名城は諦めた。
「米沢東西署の鈴木ど申すます。なんべぐ元通りにするつもりだ」
鈴木は名城の部屋に入る。
「何すんですか?」
高橋が名城の肩を掴んでドアに押し当てた。
「直さ終わる。それまでごうすてる。我慢すろ」
鈴木は隠しそうな場所を指差し呼称で確認している。ベッドの下、箱類、スーツケース、机はない、クローゼット、2DKの間取りである。シンク、棚、べランダに出る。植木はない。エアコン室外機の上に木箱がある。開けてみると洗濯ばさみの収容箱だった。鈴木はもう一度指差し呼称をして抜けた場所を確認する。フローリングに細工はないか、天井は打ちっぱなしのコンクリートで隠しようがない。冷蔵庫を開けてみる。独り者らしい中身である。総菜はない、ビールと泡盛、スパムの缶詰、それとパイナップルの缶詰が二缶それだけである。ベットのマットレスを裏返す。穴を開けた形跡はない。スーツケースに航空便の半券が張り付けてある。鈴木は探ったところを全てカメラに収めた。そして最後に部屋全体を撮って廊下に出た。高橋に向けて横に首を振った。高橋は名城の身体検査をする。財布以外に持ち物はない。
最初のコメントを投稿しよう!