都橋探偵事情『舎利』

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「おめはただの参考人んね。殺人事件絡んでる。それも大勢巻ぎ込む恐れがある。勝手さ動ぐど拘束するごどになる」 「何の参考人ですか?その居酒屋に聞いていただければ分かります。私は山形には行っていません」  高橋の大声に横田が階段を駆け上がった。名城の後ろ側にピタリとくっ付いた。 「横田、この人がら居酒屋の名前ど場所聞いでけろ」  横田がメモを出した。 「仲通り商店街の居酒屋『海人』です」  横田が頷いた。 「鈴木上げでぐれ、出番だど。横田はすぐにその店さ確認」  隣の男が顔を出した。 「警察だ、表さ出ねように」  ドアがバタンと閉まった。 「俺が一体何をしたと言うんですか?正式な捜査なんですかこれ?」 「人の命護るだめだ、正式も不正もね、それども令状下げで来て大々的にやんべが?」  それは困る。名城は諦めた。 「米沢東西署の鈴木ど申すます。なんべぐ元通りにするつもりだ」  鈴木は名城の部屋に入る。 「何すんですか?」  高橋が名城の肩を掴んでドアに押し当てた。 「直さ終わる。それまでごうすてる。我慢すろ」  鈴木は隠しそうな場所を指差し呼称で確認している。ベッドの下、箱類、スーツケース、机はない、クローゼット、2DKの間取りである。シンク、棚、べランダに出る。植木はない。エアコン室外機の上に木箱がある。開けてみると洗濯ばさみの収容箱だった。鈴木はもう一度指差し呼称をして抜けた場所を確認する。フローリングに細工はないか、天井は打ちっぱなしのコンクリートで隠しようがない。冷蔵庫を開けてみる。独り者らしい中身である。総菜はない、ビールと泡盛、スパムの缶詰、それとパイナップルの缶詰が二缶それだけである。ベットのマットレスを裏返す。穴を開けた形跡はない。スーツケースに航空便の半券が張り付けてある。鈴木は探ったところを全てカメラに収めた。そして最後に部屋全体を撮って廊下に出た。高橋に向けて横に首を振った。高橋は名城の身体検査をする。財布以外に持ち物はない。
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