都橋探偵事情『舎利』

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「僕は去年、返還二年目に沖縄に旅行しました。那覇から繁華街まで歩くのは厳しい。バスとかタクシーを利用しましたか?」 「歩きました。あなたは初めてでしょうが早い人は一時間で歩いちゃいますよ。俺はビール飲みながらだからゆっくり歩いてそれでも二時間で到着しました」  土地勘がある名城の言うことに間違いないだろう。 「ビールは何処で買ったの?」  名城は余計なことを言ってしまったと後悔した。 「空港の売店です」  あれだけの客が利用する売店で、客の利用状況など記憶していないだろうと考えた。 「レシートは?」 「捨てたか受け取っていないか」 「時間はあります、よく思い出してください」  空港のレジはしっかりしている。仮にレシート不要と客が言っても売り上げを誤魔化すことはない。三人は名城の記憶を掘り出している。 「多分受け取っていない」 「多分ですか、ビールの他に何かつまみは買いませんでしたか?ビールは何本ですか?これも忘れたわけじゃないでしょう、昨日ことですよ」  横田の詰めに高橋と鈴木が微笑んだ。 「二本です、つまみは買っていません」  これは即答した。悩んでは怪しまれると思った。 「分かりました、確認します」 「それで海人のマスターから確認は取れたんですか?取れたんでしょ?」  名城が横田に食い下がる。アリバイがあれば開放される。高橋が顎を振った。
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