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「何かあったのか?」
勘のいい小川は金城の動揺を受話器を通して感じた。
「ああ、何でもない」
「言ってみろ、知れば避けられることもある」
「実は探偵が小川を捜している」
「どうして探偵と分かる?」
金城は佐々木貿易の前でのことを小川に話した。
「ふん、だから余計なことはするなと言ったろ」
小川は叱るのも馬鹿らしい。
「それで佐々木は店を閉めて何処かに消えたらしい。佐々木の娘も行先は聞いていないらしい」
「ずいぶんと探偵と仲良く話したんだな」
小川の笑いが不気味だった。
「いいか、よく聞け、お前等は関係ない。俺一人が実行犯だ。お前等の家族には迷惑を掛けたくない。苦しんだあの時を取り返す以上に幸せになって欲しい。明日名城からレモンを預かり持って来てくれ。場所は横浜駅西口タクシー乗り場で待っててくれ。時間は終電が行き過ぎた零時から1:00.。お前と名城も接触は出来るだけ避けろ。いいな。これで準備完了だ。後は俺一人でいい。何時になるか佐々木を探し出して葬る」
「お前はどこにいるんだ?」
「知らない方がいい。頼むぞ」
電話が切れた。金城は小川との約束をメモした。名城からレモンを預かる。そして明日の深夜横浜駅で待ち合わせ。緊張で手が震える。
「誰から」
妻が訊いた。
「ああ、常連のお客さんが明日の深夜横浜西口と頼まれた」
「大変ねえ」
妻は寝返りをうってまた軽い鼾を搔き始めた。金城は胸が高まり寝付けなかった。床を出て車を発車した。行先は名城宅。NGマンションの路地にセダンが停まっている。エンジンが掛かっている。金城は車から降りてマンションに入る。エレベータで二階に上がる。ドアが開くと大きな声がする。降りずにそのまま一階に戻った。車に乗り込むときに声を掛けられた。
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