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「やはりそうでしたか、小川はその将校に復讐する。将校とは佐々木幹夫のことですね。そして佐々木の部下が斎藤嗣治」
「10年程前に小川が宮崎の私の家に訪ねて来ました。用件は洞穴の復讐をするから協力して欲しいと。私はそれをやったらあいつ等と変わらないと諭しましたが彼は聞き入れませんでした。小川は洞穴での家族の死からずっと復讐を誓っていたのでしょう。まだ五歳だった彼は30年間ずっとそればかりを考えていたのでしょう。小川は「先生忘れてください」と笑顔で帰りました。その後10年間は何も起きずに小川も諦めたのかと思っていました。しかし米沢でガス爆発で死亡した斎藤嗣治の名を記事で読んだとき、これは小川の復讐が始まったと直感しました」
「それで佐々木のいる横浜に来られたんですね」
徳田がラークに火を点けた。マイクは回っている。
「私は彼等の気持ちがよく分かる。それだけに彼等に幸せな人生を送って欲しい」
「それで小川を説得して行動を止めたい?無理でしょうねえ」
「無理とは?」
徳田の発言に黒木が反応した。
「それは、私が小川なら同じことを考えるからです」
「あなたは人殺しをしていいと仰るのですか?」
「人殺しじゃありません、敵討ちです。親の敵は子が取って当然です。ましてや洞穴の中で抵抗する術を持たない、女子供に死を強制する。目の前で見ていた小川の気持ちはよく理解出来ます。私も佐々木を追い続けたでしょう」
徳田は自身の価値観を伝えた。黒木は頼む相手を間違えたと悔んだ。
「しかしいつまでも逃げ通せない、直に逮捕され極刑に処されるでしょう。彼にそんな目に遭わせたくない。ここで止めればまだ匿うことが出来る」
「彼は捕まりませんよ」
「なぜ言い切れる?」
「佐々木を始末すれば死ぬ覚悟だからです」
黒木は唖然とした。
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