都橋探偵事情『舎利』

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〔このでかいのは何だって?人の顔をじろじろ見るなって言え、お前のケツにぶち込んでやるぞ〕  トムが中指を突き上げた。渡嘉敷は二人を宥めた。 〔あなたが武器売買未遂で止められたことはジェンキンズ中尉から伺いました。あなたが接触した日本人を教えてください。日本の東北地方でアメリカ製の手榴弾を使用した殺人事件が発生しました。前にも米兵から闇ルートで流れた火器がやくざの抗争に使用されています。今回の事件と関りがあるのかどうか、そのブローカーを捜しています。犯人はまだ逮捕されていません。これ以上犠牲者を出したくありません。ご協力ください〕  渡嘉敷が頭を下げてお願いした。本来は中西がその役を担うわけであるが如何せん過去の記憶から米軍を憎んでいる。素直に向き合えない、素直に許したら、横浜大空襲で爆弾に追われて逃げる際に、足元で燃えていった人達に申し訳ないと考えている。 「西、お前の私的な恨みは俺には関係ない。次の犠牲者を出すわけにはいかないだろう」  渡嘉敷に叱咤されて血の気が引いて行った。しょんぼりする中西を見てトムが笑った。 〔よし、行こう〕 〔何処へ?〕 〔受け渡しをした場所だ。クワトウと事前に待ち合わせをした場所だ〕  三人はジープに乗り込んだ。 〔那覇〕  那覇に到着した。 〔トム、那覇の何処だ?〕 〔マスヤーマ〕 〔マスヤーマ?まつやま、松山?〕 〔そうだマスヤーマ、クラブオキナーワ〕  渡嘉敷と中西が目を合わせた。
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