都橋探偵事情『舎利』

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「なーふぁぬ殺人くとぅとぅ同一ぬ拳銃やいびたん。あぬ拳銃んかえーみーさる指紋ぬ五件あいびーん。デニス加藤とぅマサル杉本、あんし被害者ぬ名城源治、名城源治ー前があくとぅちゃーき判明。残り二件ぬ指紋ー不明」  鑑識が捜査をしているみなに伝えた。 「何だって?」 「一致した。同一犯の仕業だ。この被害者は前があるから指紋照合で判明した。二人の指紋は分からない、だけど新しいものらしい」  連続殺人事件に発展した。 「被害者んかい親族ーうぅらんぬが?」  仏壇に妻の遺影がある。それ以外に同居人の痕跡はない。 「グラスが二つあるな、客が来ていたんだろう」  中西が泡盛の瓶を摘まみ上げて言った。 「くぬグラスぬ指紋照合しぇー、あわてぃれー」  渡嘉敷が指紋照合を急がせた。近隣聞き込みから戻ったベテラン刑事が渡嘉敷の前に出た。 「名城源治んかえー養子ぬうぅいびーん。うっとぅぬっくゎっしうやぬ戦死しふぃちとぅったん。やいびーしが随分前に東京んかいんじてぃんじゃるそうやいびーん。とぅないぬばあさんぬうびとーいびたん」 「養子がいたらしいが随分前に東京に出て行った」 「戻って来たとは考えられないか?」  中西が予想した。 「たーが役所んじ名城源治ぬ謄本確認し来ーわ」  相手が敵対するやくざなら酒盛りはしないだろう。懇意がある者でなければ警戒して家に上げたりはしない。 「西、飛行機の時間だ、送って行く」  時間切れである。しかし米沢東西署への土産話は充分持ち帰れる。
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