都橋探偵事情『舎利』

123/191
前へ
/191ページ
次へ
「ああ、もう一日居たいな。せめて指紋照合を確認するまで」 「分かった電話する。明らかになった全てを逐一漏れずに報告するから安心しろ」  那覇空港まで送ってもらった。 「ありがとう、また一杯やりたいな」  中西が手を差し出した。 「ああ、俺もだ」  がっちりと両手を被せた。  眠れぬ夜を過ごした。 「パパ、仕事は?」  小学生の娘は冬休みである。布団から出てこない父親の脇で寝そべった。 「ああ、今何時?」  金城は飛び起きた。時間は10時を過ぎていた。 「お父さん、ドライブ行こう」 「駄目だお父さんは昨夜も今夜もお仕事だよ。 「つまんない」  娘の甘える顔が狐顔になった。金城は着替えた。 「今日はこのまま深夜まで通しだよ」 「ご飯は?」  妻の問いに返事をせずに出掛けた。鶴見駅で名城が勤めている八百屋に電話をする。 「もしもし、名城さんをお願いします」 「ああ俺だ。小川から指示はあったか?」 「お前んちでレモンを受け取り、深夜小川に渡す」 「そうか、俺は警察にマークされている」 「えっ、やっぱり」  金城の予感は当たっていた。とすると声を掛けて来たセダンの男は警察だろうか。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加