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「このうずだな、車庫さ車はねが仕事がな」
鈴木が家を見回しながら言った。
「こんにぢは」
「はあい」
金城の夫人が出て来た。
「失礼だげど金城ハイヤーはご主人だべが?」
「はい、主人のタクシーです」
金城夫人は怪訝な表情をした。
「われ、ある事件追っていますて、ご主人さ確認だげすたぇど思って来だ。ご主人はお出掛げだが?」
高橋は警察手帳を差し出した。夫人は動揺している。
「奥さん、ほだえ心配すねぐでもいいすよ。タクスーは色々な人ば乗しぇる。その中におらだが捜すてる男がいるがいねが確認する。それだげだ」
強面の高橋がいくら優しく伝えても相手は構えてしまう。生れ付き表情が穏やかな鈴木だと夫人は安心した。
「ああ、そう言うことでしたか。主人は時々お客さんとトラブルがあると言っています。その大概のお客さんは酔っているそうですけど。主人は今朝出掛けてそのまま深夜の予約がありますのでそれを終えてからの帰宅だと思います。無線がありますから入れてみましょうか?」
無線で知らせれば警戒するだろう。
「いえ、明日にでも伺うっす。ちなみに予約の客はどぢらが分がっかっす?」
「横浜の西口だと言っていましたが詳しいことは分かりません」
「どうも。ご主人さ知らしぇるど気になって事故でも起ごされではいげね。大すた用でもねがら帰宅されるまで警察来だごどお話にならね方いいがど思うっす」
高橋から事故と言われて不安になった。生れ付き小心で警察が来たと言えば確かに動揺して事故を起こしかねない。金城夫人は無線で伝えることを止めた。二人は喫茶店に戻った。席に着くとすぐに呼び出された。
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