都橋探偵事情『舎利』

132/191
前へ
/191ページ
次へ
「もしもし、横田です。名城はずっと店にいます。自転車で近所まで配達に出掛けましたがそれ以外は接客をしています。そちらはどうでした」  横田も個人タクシーの関連が気になる。 「今夜、横浜の西口で予約客乗しぇるらすい。それは自動車で張り込みだぇ、手配頼む。ちょっと待で、鈴木話すたうみだえだ」  高橋が鈴木と代わった。 「横田君、お疲れ様だ。ひとづ確認すたぇごどがあるんだげど。客で変わったのはいねがな?それどその店さ缶詰は置いであんべがぁ?パインどが桃どが?」 「名城が配達に出た後探ってみます」  二人は席に戻った。高橋は焦れて貧乏ゆすりが出た。長年連れ添っている鈴木には高橋の焦りが手に取るように分かる。 「焦るな、おめの悪い癖だ。先見えねぐなるぞ」  鈴木が高橋の貧乏ゆすりをと止めた。 「おめはいいなあ、のんびりど構えでっから。おらは再発心配で堪らね。名城は米沢の事件後さ沖縄さ行ってる。二日でどんぼ返りだ。横浜の刑事手榴弾の出どごろ探ってるが名城はたがぎ帰ったどみるのが筋だ。だってそうだべ。米沢のホス名城の運転免許利用すて犯行さ関係すてる。名城は落どすたど言ってるが届げ出すたのは事件後すぐだ。こだな偶然があるわげがね」  高橋の足がまた揺れ出した。 「気にあるごどがある。この写真見ろ」  鈴木は昨日名城の部屋をくまなく調べた。その場所をしっかりとカメラに収めている。現像した束から一枚を差し出した。 「何だ、冷蔵庫の中身だろ、おがすな物でもあるのが?」  冷蔵庫にはビールとスパムの缶詰、それにパイナップルの缶詰が二缶写っている。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

66人が本棚に入れています
本棚に追加