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「君の行動を警察には知らせずになんとか止めたかった。斎藤をやったことはもうどうしょうもない。でも佐々木を狙うのは止めにしてくれないか。これ以上罪を重ねるな、この秘密は守る。今はまだ警察も君にまで手が及んでいないらしい。このまま行方を暗ませば捕まることはないと思う。私も協力する。なっ、頼む小川、止めてくれ」
黒木は必死に佐々木殺害計画の中止を訴えた。
「俺のやっていることは罪なんですか、先生?それじゃ洞穴の中であいつ等がしたことは正義なんですか、先生?もう遅い。俺は佐々木をやって、自分も死ぬ覚悟でいます。どうしても年内に片付けたい。佐々木にこれ以上年を越させない。あいつに正月気分を味合わせたくない。だから黒木先生も邪魔をして欲しくない。先生、テニアンではお世話になりました。待っていてください。俺もすぐに行きます」
佐々木はマフラーを外した。それを縒って細くした。黒木が後ずさる。
「止めろ、止めろ・・・」
「黒木先生、探偵は佐々木のことで何か伝えていませんか?」
「米沢に行くと言っていた。斎藤君の葬儀に出るんじゃないだろうか」
黒木も佐々木の殺気に押されて情報を明かした。自分の命が惜しい、命乞いでもある。
「そうですか、ありがとうございます」
佐々木は反転してドアに歩き出す。黒木は「ふーっ」と安堵の溜息を吐いた。次の瞬間佐々木はまた反転して黒木の隙をついて後ろに回り首に縒ったマフラーを巻き付けた。二分ほど締め続けて黒木が前のめりに倒れた。更に増し締めをする。微動だにしない。黒木をベッドに寝かせて毛布を掛けた。廊下に出た。息を整えるために一階までゆっくりと階段を下りた。
「黒木さんから伝言です。明日はゆっくり寝ていたいから掃除不要と言っていました」
「かしこまりました」
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