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「洋子、明日は葬儀だね、あたしも行こうか?」
「来なくていいわ。一人で送りたいの」
「失礼しました。元旦はいないけど二日においで、美味しい雑煮を食べさせてあげるから」
「うん。ママありがとう、良いお年を」
斎藤洋子が徳田の前を通過した。足音が消えるのを待って後を追う。駅前でタクシー待ちをする。
「こないだは失礼しました」
徳田は洋子に声を掛けた。
「ああっ、あなたは」
洋子は口を塞いだ。
「私はあなたに嘘を吐いていました。話しを聞いてくれませんか、テニアンでの真実を伝えたい」
「もう聞きました。昨夜テニアン島での兄の上司に当たる方がお見えになり一部始終を話してくれました。もうあたしに構わないでください。警察を呼びますよ」
タクシーが洋子の前に止まる。ドアが開いた。
「その佐々木さんが狙われている。お兄さんを殺した男です。佐々木さんから聞いたなら繰り返さないが、その男は復讐と定義付けてあなたのお兄さん、そして佐々木さんを狙っています。洞穴で家族が死んだ同じ手段、手榴弾を使ってです」
「お客さん、どうします?」
運転手が苛立つ。洋子は次の客に譲った。
「ほんとうですか?」
「間違いありません、狙うのは佐々木さんが現れる葬儀の時でしょう」
「佐々木さんはテニアン島でのことを謝罪してくれました。そして大金を兄の香典にくれました。陽の当たるとこに埋めて欲しいとの願いです。あたしそうするつもりで受け取りました」
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