66人が本棚に入れています
本棚に追加
「葬儀に参列すると?」
「はい、陰ながら手を合わせると」
「いつですか?」
「焼き場は明日の午前11時ですが、夕方に長兄と二人で。佐々木さんがもし訪ねてくれば一緒に、場所は兄が死んだ借家で送ります。佐々木さんからいただいた香典から兄の借家の周りのスクラップを撤去してもらいました。明日の朝、長兄と中を掃除します」
「そのことを知っているのは?」
「私と長兄と佐々木さんです」
「警察には?」
「一応連絡してあります。事件が解決していないので終わればまた警察が管理するとのことです」
警察から漏れることはないだろうか、徳田は不安に駆られた。
「そうですか、私からの提案です。予定を変更してください。あなた達が危険だ」
「そんな勝手なことを、あなたは一体誰なんです。テニアンで兄と一緒だったなんて、あれは嘘なんでしょう。刑事さんが必死になって捜していましたよ。パブのママを信用させて、履歴書を引き出して、佐々木さんを追っていたんでしょ」
確かに洋子の言う通りである。弁解の余地はないが反省もしていない。多少後ろめたいが探偵の使う手法であり、一々を気にしていたら商売にならない。
「実は私はこう言う者です」
「都橋興信所、所長 徳田英二」
洋子は外灯の薄明かりの下で読み上げた。
「私は依頼人から頼まれて主犯を捜しています。あなた方に嘘を吐いたのは申し訳ない。この通り謝る」
徳田はソフトを摘まんで揺らした。
最初のコメントを投稿しよう!