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「これがいい」
缶ビールの空き缶とジョッキである。
「これをすぐ鑑識に回せ、沖縄から射殺事件に使われた拳銃の指紋を届けてくれるからすぐに照合だ。俺はこの足で横浜西口に向かう。米沢の二人は?」
「もう西口に向かいました」
「土地勘のない二人じゃ心配だ。お前が車を使え、中西等が署に戻ったらお前だけ残って照合の結果を確認しろ。黒だったらすぐに来い」
布川はタクシーを捕まえて西口に急いだ。
米沢東西署の二人は横浜駅西口の人の多さにたまげていた。
「こだなに人がいるのが?一旦家さ戻ってまだ出で来てるんでねが?」
鈴木は鳥打帽の耳当てを内側に折り込んだ。
「これが横浜だ。恐れ入ったが?」
知ったかぶる高橋を鼻で笑った。
「おい来だぞ、金城ハイヤーだ」
鈴木が見つけた。
「客乗り込むどぎに押さえんべ。おらが羽交い絞めにする。おめは客退避さしぇろ。横田も来んべ」
二人は金城の動きを見張る。まだ30台は並んでいる。一組が乗るのに8秒、まだ4分掛かる。その時男が乗り込んだ。レーンから外れて走り出した。二人は慌てて乗り場に走り寄る。
「運ぢゃん、急ぎだ」
高橋は乗り込もうとしていた勤め人を押して先に乗り込んだ。既に金城はロータリーを出ている。
「どちらですか?」
「あのタクシーだ」
「どのタクシーですか、タクシーばかりですよ」
のんびりとした運転手は動く気配がない。見失ってしまった。
「もういい、安全運転さ心掛げろや」
高橋が降りた。割り込みされた客が高橋を睨んでいる。
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