都橋探偵事情『舎利』

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「そうだ、この拳銃で三人が射殺された。それに名城豊が関与している」 「その名城の運転免許証は米沢の手榴弾殺人事件で使われたレンタカーを借りています。本人は失くしたと事件後に届け出ています」  横田が名城の関連を説明した。 「決まりだな、名城が関係している。よし西口に合流だ」  三人が出ようとすると当直が中西を呼んだ。 「中西さん、また嫌な奴から」  中西は電話に出た。 「お前と違って忙しい」 「いいか西、よく聞け、横浜の浜ホテルで人が死んでいる。俺の依頼人だ。急げ」 「おいおい、ほんとか?よし、交番飛ばす」 「駄目だ、お前が行け、手榴弾と絡んでいるぞ」 「何でお前が手榴弾なんだ?」 「時間がない、早くしろ、浜ホテル302だ」 「お前どこにいるんだ?」 「米沢だ、米沢で全部終わる」 「おい、英二、英二、カッコ着けやがってチンピラ探偵が」  徳田はもし黒木が殺害されていれば小川の仕業と推測している。これまで小川の敵討ちは自分の価値観と近いと、ある意味同情していた。だから小川に佐々木だけは取らせてやろうと決めていた。しかし黒木を殺害したとなればそれは一線を外れてしまう。人殺しに成り下がった。人殺しにはそれなりの制裁が必要である。手榴弾で自爆など絶対に許さない。司法で裁かれて悪人であることを曝け出す。そのために中西が米沢に飛んで来ることを誘った。 「おい横田、少し回り道してくれ、幸町周りで行け」  徳田からの情報である安ホテルの前で停めた。 「10分後に電話しろ」  ホテルのマッチを横田に渡した。
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