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「警察だ、302号室の鍵を開けてくれ」
フロント係に続いて階段を駆け上がる。係がノックする。
「黒木様、黒木様」
音沙汰無し。
「鍵」
中西が差し込んだ。
「離れていろ」
拳銃を手にドアを開ける。ベッドに誰かいる。
「このホテルは包囲した。観念して出て来い。今なら許してやる」
ライトを明るくした。足元から掛布団を引っ張った。男が死んでいる。中西はバスルームのドアを蹴飛ばした。いない。ベランダを見た。いない。
「おい、隣の客を確認しろ、両隣だ、叩き起こせ」
廊下に出た。右隣は夫婦で左隣はビジネスマンだった。中西は拳銃を仕舞い署に電話を入れた。
「救急車は要らねえな」
中西が溢した。丸いテーブルに名刺が置いてある。徳田の名刺だった。
「たくっ」
摘まんでコートのポケットに入れた。西口交番から三人の警官が出向いてホテルを閉鎖した。
「支配人は?」
「支配人は東京にお住まいです。緊急の際は私が代行する手配になっています」
「そう、それなら話が早い。新たな客は受け入れない。チェックアウトする客は警官が立ち合いで行います。凶悪犯に絡んだ事件になります。協力宜しく」
中西は警官に指示して西口ロータリーに向かった。中西は米沢東西署の二人とは初対面である。
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