66人が本棚に入れています
本棚に追加
郡山に入り粉雪が激しくなってきた。
「俺、雪を見るの初めてだ」
渡嘉敷は窓を開けて手を出し粉雪を掴んでいる。
「寒いって言うの、閉めてくれよ頼むから」
中西のお願いを笑い飛ばして楽しんでいる。
「西は雪が嫌いか?」
「好き嫌いで考えたことない。ただ寒いのは好きじゃない。頼むから敏閉めてくれ」
渡嘉敷は仕方なく窓を閉めた。
「それよりチェーンだな。この車チェーンなんか積んでねえぞ」
言った矢先にスリップして後部がガードレールに擦った。
「駄目だ、これ以上はチェーンなしじゃ進めない」
中西は車から降りた。
「敏、お前も降りろ、ヒッチハイクだ」
マイクロバスが来たので車道に出て手を振った。
「危ねぇよおめ、スリップしたら轢ぎ殺すとごだったよ」
ドライバーは爺様だった。
「悪いねおじいちゃん、チェーンがなくて走れない。乗っけてってくれないかな。俺は横浜から来た警察で米沢の手榴弾殺人事件で来たんだ」
中西が交渉している間に渡嘉敷は後部座席に座り込んだ。
「おばあちゃん幾つ?俺の母親は72歳」
「おらの方がひとづ上だ」
「そう元気だね」
連れの夫人と渡嘉敷が話し込んでいる。
「あれだもの、乗せねぇわげにはいがねぇべ」
爺様は中西を顎でしゃくった。
「爺さん、ありがとう、さすが山形の人は親切だ」
「おらは福島県人だ」
「ドンマイドンマイ、同じ東北の百姓だ」
悪口だが悪気はない。
最初のコメントを投稿しよう!