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「どうぞ」
「何がどうぞだ」
中西が続いた。
「滑っから気付げでけろ。こごがら落ぢだら大概死ぬよ。米沢さ来だ意味がね」
癪に障る言い方だが我慢より他はない。渡嘉敷も上がった。屋上の雪は解けずに30センチも積もっている。佐藤は長靴だが中西は革靴、渡嘉敷においてはズック靴である。
「凍みるな」
渡嘉敷が震えた。
「あそごだ」
佐藤は立ち上がり30センチほどのパラペットに片足を掛けて指を差した。二人は仕方なくパラペットまで寄る。
「昨日、近所の解体屋さ頼んで外周のスクラップ全部片付げだ。それまではゴミ屋敷ど近所でも評判ですた。ブルースート掛げられでるがあそごは爆風で屋根飛んだ所だ」
「警察が片付けを頼んだんですか?」
「いえ、被害者の妹知り合いに頼んだんだ。結構な支出だべ」
中西はスクラップで囲まれた眼下の家を想像した。見えて来たのはジャングルの中の洞穴。
「あいつはテニアン島の洞穴から抜け出せなかったんだろう」
中西がぽつんと言う。
「それでホシを確保する作戦としてはどう考えているんでしょうか?」
渡嘉敷が佐藤に質問した。
「午前中には高橋班長戻って来るっす。それまでは、こぢらの行動察しぇられねようにすろどのごどだ。こだな小さな町だ。辻々さ人立っていれば、ホスも警戒すて荒手さ出では困るっす。如何しぇん、手榴弾だがらね相手は」
「とすると被害者の自宅におびき寄せると言うことですね?」
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