66人が本棚に入れています
本棚に追加
「お兄さん、嗣治兄と仲直りして、お願い。嗣治兄には天国に行って欲しいの。お兄さんと仲違いしたままじゃそれは叶わないわ」
洋子が強く言った。
「ああ、分かっているよ」
遺骨に手を合わせた。気は入っていないが妹は可愛い、その妹に悲しい思いをさせたくない。
「ありがとう、お兄さん」
洋子は兄に抱き付いた。
「灯油が足りなくなるから買って来る。一度家に戻り車で来る。お前は?」
「お兄ちゃんが戻ったら交代でアパートに戻る。もしかしたら佐々木さんが来るかもしれないからお酒とおつまみを買ってきます」
兄が出掛けた。洋子は嗣治の遺影をじっと見つめた。テニアン島から戻ってたった一回カメラの前で見せた嗣治の笑顔に涙が溢れた。
米沢東西署に横浜ナンバーのタクシーが到着した。
「これで請求すて、すぐに支払ってもらえっから」
高橋は名刺の裏に運賃を記入して署名した。
「ご苦労」
課長が玄関まで出迎えた。
「さどうはなすてる?」
「横浜と沖縄のタッグを案内している。もう戻ると思うが」
「それで動ぎはあっかっす?先日の斎藤の妹たぶらがすたのは探偵ですた。ホスじゃね」
「そうか、世話掛けやがって。まあいい、疑いをひとつ潰せたんだ」
「佐藤等戻ったら全員集めでください」
課長が大きく頷いた。高橋の気合に威圧された。11:25.に佐藤達が戻って来た。
「集合掛かっています」
若い警官が敬礼した。二階に上がると署のほとんど全員が集まっていた。
最初のコメントを投稿しよう!